【レースレポ】信越五岳マイル④
A7笹ヶ峰(115km)-A8大橋林道(130km)
この辺りから、写真を撮る余裕は全くない。
本来なら気持ち良く走れるボーナスゾーンのはずだけど、全然スピード出ない。
それでも歩くわけにはいかないので、なんとか走る。(とは言ってもキロキロ8-9)
牛がたくさん居て、1頭がジッとこちらを見つめてくる。
お前らはバカなのか?
そう問いかけられているかのような、何処か遠い目をしている。
ブロガーの端くれなら牛の写真の1枚でも撮らなくては。
そう思ったけど、眠気に負けて無駄な動きをする気力が残ってない。
そして変化のないコースが拍車をかける。
走れる体力はあるんだけど、身体が思うように動かない。
隙を見せると、すかさずパトラッシュが迎えに来る。
パトラッシュ、僕はもう限界だよ。
なんだかとても眠いんだ。
このまま天に召されて楽になりたい。
そんなことを考えながら、予定より35分遅れてA8到着。
A8大橋林道(130km)-A9戸隠(142km)
ここはボトルに補給だけして早々に出発したと思う。
自分のスタイルだと一度遅れ出すと歯止めが効かない。
持ち直して復活ってこともたぶんない。
さすがに130kmを超えると脚が重い。
もうパトラッシュにも勝てない。
堪らずコースの端で寝ることに。
リュックを背負ったまま、木に寄りかかって仮眠。
とりあえず5分。
アラームをセットする。
5分だけでも寝るとスッキリした気分になる。
ある程度時間が経つとまた眠くなるので、5分仮眠。
それを繰り返して、なんとか前に進む。
途中でアラームをセットし忘れて、15分くらい寝てしまう。
ふと寒くて目が覚める。
これは絶対やっちゃいけないミス。
汗冷えして、低体温まっしぐらの感じ。
慌てて長袖シャツに着替えて、動かない身体を無理やり動かして、なんとか体温を上げる。
気づくと初日の夜とは打って変わり、気温がかなり低い。
息を吐くと白くなる。なんなんだ、この寒暖差は。
何回か仮眠を取りながら、辛うじて戸隠のエイドに到着。
さすがに疲労困憊。
予定より1時間15分遅れ。
もう30時間切りは無理だろう。
ゴールさえ出来れば、タイムは何時間でもいい。そんな気持ちになった。
このエイドは、楽しみにしていた蕎麦がある。
このタイミングで、温かい蕎麦エイドが食べれるのはありがたい。
エイドから少し離れた建物の中にあるので、ちょっとめんどくさいなと思いつつももらいに行く。
ペーサーいたら、きっと持って来てくれるんだろうな。
羨ましい。
サポーターもたくさんいる。
羨ましい。
中に入ると蕎麦を食べてる選手と、奥で毛布に包まって寝てる選手が目に入る。
まさに野戦病院。
しかしなんとも気持ち良さそう。
ブルーシートの上にアルミのシートが敷いてあり、モケモケの毛布に包まってるだけだけど、さっきまで山道でリュックを枕に寝てた自分に取っては高級ホテルで寝るサータのベッド以上の価値がある。
もうダメだ。ここで1度寝る。
パトラッシュに寄りかかって、じゃなくて毛布に包まってグッスリ寝る。
ただ問題なのが何分寝るか。
とりあえず蕎麦を食べながら、頭をフル回転して考える。
いくら残り18kmと言っても、ゴールが確実な訳ではない。
この先何かトラブルがあるかもしれないし、寝過ぎて身体が動かなくなることも考えられる。
頭働いてないけど必死に考えた結果、仮眠は15分。
起きて、靴履いて、ザック背負うのに10分(遅っ!)
身体冷えるから蕎麦湯を飲んで身体を温める。さらに外にあるレモンティー飲んで、ぶどう食べて10分。
22時までにエイドを出ればオッケーとした。(実際は2分オーバーしたけど)
スマホのアラームをセットして、寝よう思った瞬間には寝落ちしたと思う。
15分後、問答無用でアラームが鳴る。
あと15分。いや、あと5分でいいから寝たい。
でもここで寝ると、ズルズル行ってしまう。
もしかしたら、ここの5分が命取りになるかも。
いやいや、30時間のレースで5分なんて誤差でしょ。
そんな葛藤を乗り越えてなんとか起きる。
シューズを履くのも一苦労。
やっぱり寝ると筋肉が硬くなるので動きづらい。
毛布に包まっても多少身体は冷えるので、蕎麦湯をもらい内臓を温める。
外でホットレモンティーをもらって更に温める。
大好きなぶどうを食べまくって、モチベーションを上げ最後のエイドを出発。
A9戸隠(142km)-W3飯綱(152km)
残り18km。ここのパートは最後にして最大の瑪瑙山が待ち構える。
初めてのコースだからどんなものか知らないけど、ペーサーと選手の会話からしてとにかくヤバいらしい。
どんなもんじゃいと思いながら、とにかく先へ進む。
しばらくすると安定のパトラッシュ登場。仮眠取っても意味なかったな。
今回はペーサーもサポーターもいないかわりに、終始パトラッシュが付いてくれた。
もうタイムも関係ないから、眠くなったら寝る作戦。
パトラッシュ、僕もう限界だよって思ったら、すぐ寝る。
制限時間内にゴール出来ればなんでも良い。
仮眠を混ぜながら、瑪瑙山を登って行く。
思ったよりも登りがクドイ。
残り10km。
頭の中はずっと、ラララ〜、ラララ〜、ジングル、ジングル、チャーチャーが流れてる。
いやいや、本当はここはミスチルの終わりなき旅なんだよ。
いつもはそれを頭の中で流してるのに、フランダースの犬ではモチベーションも上がってこない。
しかも歌詞分かんないし。どんな歌詞だったけ?
気になり出すとトコトン気になる。
かと言ってマイルのレース中にググるほど馬鹿ではない。
とか考えてる内に、瑪瑙山と隠れ裏ボス山もクリア。
下りに入るとバンバさん登場。
無事会えたー。ボランティアお疲れ様です。
ここからは気持ち良い下りだよ、頑張ってと送り出してくれた。
この終盤も終盤。ホント辛い時にバンバさんに会えて元気が出た。
あなた神です。いや、違う。大仏か。(バンバさんのボランティアレポ面白いからぜひ読んで)
ここでバンバさんに会えるかどうか、レース前から心配だったけどなんとか会うことが出来た。
膝とモモマエロマエが終わってて、気持ち良いコースもヨチヨチ下るのが精一杯。
だけどなんとか下りもこなして、最後のウォーターエイドに到着。
W3飯綱(152km)-ゴール(160km)
ここまで来れば、さすがにゴールは間違いない。
ここまで30時間45分で残り8km。
ダラダラとゴールまで走っても勿体ないので、最後は目標を持って走ろうと32時間切りを目標にして出発。
最後は上り基調の林道。
それなりに走れる。ただ脚がそこまで残ってないので、500m走って300m歩いて作戦。
残り3kmとか、残り1kmっていう看板はない。
ひたすらゴールを目指して走るだけ。
だんだんマイクの声が近づいてくる。
林道を抜けると一気に明るくなり、ゴールが目前だと気づく。
なんとかゴールまで辿り着けた。
正直言って、嬉しさとか感動はほとんどない。
無事帰ってこれた安心感や、もう走らなくていいという気持ちが強い。
それでも見ず知らずの自分に、おめでとうって言ってくれる声援は本当に嬉しい。
名前を呼んでくれて、たくさんの人に祝福してもらい、最高の雰囲気でゴール。
しっかりとゴールに一礼して、この雰囲気を焼き付ける。
2回目の100マイルが終わった。
タイムは31時間54分。なんとか32時間は切れた。
ゴール後着替えるより先に、気になってたフランダースの犬の曲をググる。
歌詞の謎は解けたんだけど、よく見ると頭の中のパトラッシュと本当のパトラッシュが違う。
自分がイメージしてたパトラッシュ。
本当のパトラッシュ。
自分がパトラッシュと思ってた犬は、アルプスの少女ハイジのヨーゼフ。
全然違うじゃん!
名言も、僕もう限界だよ、じゃなくて
僕もう疲れたよ、だったし。
人間の記憶なんていい加減だ。
レース編はこれでお終い。
信越五岳は表彰式までが信越五岳。
あと1つで終わるのでお付き合い下さい。
では、では。